「ふざけんなてめぇ!」
オフィス中に、営業部長の怒声が響き渡る。部下は固まり、周囲は見て見ぬふりをする。
人事部に呼び出され、本人も反省し、アンガーマネジメントの本を買って研修にも出る。
それでも、また怒鳴ってしまう。
いろいろな組織に関わっていると人が変わるのは本当に難しいと痛感します。
特に厄介なのは、本人に悪意がないケースです。
ある職場に、部下を怒鳴ることが常態化していた営業部長の男性がいました。まさに冒頭のような状況です。
でも彼ははなから部下を傷つけたいと思っていたわけではありません。むしろ成果にこだわるあまり、本人も深く悩んでいました。「怒らないようにしよう」「でも成果を出さないと」のはざまで混乱しながらも、真剣に変わろうとしていた。
でも、変わらない。頭ではわかっている。コンプライアンスも理解している。怒鳴ったあとに後悔もする。 それでも、反射的に強い言葉が出てしまう。 つまりこれは、本人の意識改革だけでどうにかしようとしても、限界があるということです。
● 本人を変えるのではなく、役割を変える
注意はもちろん必要ですが、この人にさらなる叱責をしても功を奏すとは思えません。
むしろ必要なのは、人を無理に変えるのではなく、人の特性を見たうえで、組み合わせや環境を変えるという視点です。
組織の中で起きている問題は、個人の欠陥だけで生まれるものではない。人と役割、人と環境のミスマッチから生まれることが少なくない。
このような場合、本人を変えようとしてもなかなかうまくいきません。これは持って生まれた資質のひとつと割り切って、環境を調整するほうに考え方をシフトする。沸点の低い人をきつく指導すれば温厚になる……ってもんじゃないことはおわかりですね。
このようなケースの場合はプレイヤーに戻させることです。ただし、役職手当が外れても、営業手当で手取りが変わらないことを確認したうえで、本人にこう伝えたらどうでしょうか?
「今のままだと、部下のみなさんはもちろん、あなた自身もつらいですよね。管理職が合わなければ、プレイヤーとしてまた一花咲かせたっていいじゃないですか?」
この提案によって、部下は怒鳴られる環境から解放され、本人も苦手な役割から離れることができるのではないでしょうか。
●向いていない役割は組織への負荷が高い
問題の根っこには、会社側の良かれと思った思い込みもありました。
「この年齢になったら管理職になるものだ」「部長になるのは本人にとってうれしいことだ」「優秀なプレイヤーなら、当然マネージャーもできるはずだ」 しかし、これはどの人にも当てはまるものではありません。成果を出す力と、人を育てる力は別物です。強い個人が、よい管理職になるとは限らないのです。
いまの管理職の世代には、まさにこの価値観の中で働いてきた人も多いはずです。昇進は報酬であり、管理職は出世であり、プレイヤーに戻ることは後退だと思っていますが、本当にそうでしょうか。
向いていない役割に人を置き続けることは、本人にとっても、部下にとっても、骨折り損のくたびれもうけです。怒鳴る人に「変われ」とただ言うだけでは、現場の被害は止まりません。
人を変えるのではなく、環境を変える。
そのほうが、現実の組織ではよっぽどタイムリーで効果的なケースがあることも、ぜひ知っていてください。